シンガポールの労働法の特徴や違いを簡単に。わかりやすく。

各国の労働法はその国の独自の文化や考え方が反映されています。各々の詳細を語ると相当の量になりますが、こちらではごく簡単に一般的な内容を6点ほどに絞ってお伝えします。今回はシンガポールです。

多くの日本人が現在シンガポールで働いています。

シンガポールの労働法は、労働者保護と労働市場の柔軟性のバランスを取ることに重点を置いています。世界一般と比べた場合の特徴を以下に挙げます。

  1. 労働市場の柔軟性:
    • シンガポールの労働法は、労働市場の柔軟性を高めることに注力しています。解雇の手続きは比較的簡便で、企業が経済的な変動に対応しやすくなっています。シンガポールでは、労働市場の柔軟性を重視しつつも、労働者の権利保護が考慮されています。
    • そのため、解雇は比較的容易に行える一方で、法的な保護が整備されており、適切な手続きを踏むことが求められます。シンガポールでは、雇用契約の条項に基づいて解雇が行われることが一般的です。雇用契約には、解雇の理由や手続きが明記されていることが多いです。
    • ただし、解雇には通常の手続きが求められる場合があり、例えば、予告期間の提供が必要です。解雇には、正当な理由が必要です。
    • 例えば、業績不振、会社の再編成、または従業員の不正行為などが正当な理由として認められます。正当な理由がない場合や、不当解雇と判断される場合、従業員は法的手続きを通じて救済を求めることができます。
    • 通常、シンガポールでは法的に定められた解雇手当はありませんが、雇用契約や会社のポリシーに基づいて、解雇手当や退職金が支給される場合があります。
    • 労働者は、解雇に対して不当解雇の訴えをする権利があります。シンガポールの労働法では、労働者が不当な解雇に対して申し立てをするためのプロセスが定められており、労働者は「労働争議調停センター」などを通じて問題解決を図ることができます。
  2. 最低賃金制度の不在:
    • シンガポールには最低賃金制度が存在しません。その代わりに、労働者の賃金は主に市場の需要と供給に基づいて決定されます。なお、シンガポールのほかにもスウェーデンは、最低賃金制度を持たない国の一例です。労働市場の賃金は、労働組合と雇用主との間での集団交渉を通じて決定されることが多いです。ノルウェーも最低賃金制度を持っていませんが、労働市場の賃金は集団交渉や業界ごとの協定に基づいて決定されます。
  3. 労働者保護の法制度:
    • 労働者保護のために、労働法には十分な規定があります。たとえば、労働契約の明文化、労働時間、休暇、育児休暇などが規定されています。
  4. 労働組合と集団交渉:
    • 労働組合の存在はありますが、労働組合の強さや影響力は、欧米諸国と比べると比較的小さいです。シンガポールでは、労働組合の活動は労使関係の安定を目的としており、集団交渉のプロセスも比較的スムーズです。政労使は良好な関係を築いているといえるでしょう。
  5. 外国人労働者の規制:
    • シンガポールは外国人労働者を積極的に受け入れており、そのための規制やビザ制度が整備されています。外国人労働者は特定のビザを取得する必要があり、これにはスキルや給与の要件が設けられています。昨今は、日本人にもかなり高い水準の要件が設定されており、駐在がしにくくなっている現状があります。
  6. 労働市場の規制と政府の介入:
    • シンガポール政府は、労働市場の規制や監視を通じて、経済の安定と労働者の権利保護を図っています。しかし、労働市場の規制は比較的軽度で、企業の運営には一定の自由が確保されています。

「シンガポールとビジネスをするための鉄則55」

全体として、シンガポールの労働法は効率的で柔軟性が高い一方で、労働者保護の面でも適切な規制が施されています。これにより、シンガポールはビジネス環境の魅力を保ちつつ、労働者の権利も尊重するバランスを取っています。

この記事の筆者

Lio(りお) キャリアコンサルタント・SEOライター/実績のある日本の国家資格キャリアコンサルタント&行動心理士。大手日系&外資系の会社で人事(HR)歴25年。海外で人事関係の学位取得(Professional diploma)。自らも転職4回&外資系含む大手200社受験経験有り、日本の転職市場を肌で経験。海外子女でありTOEIC900点台をキープ。越境して働く!英語を活かして働く皆様向けにキャリアメディアとレッスンでご支援しております。